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身の周りの物理現象Physical phenomenon Around Human

 本研究室では、研究の過程で得られた高度な解析手法を用いて、身の周りで起こる物理(電気および熱)現象について物理・工学の見地から考察を加えています。最新の科学技術で、身の周りの現象を再検討すると今までわからないことがわかる場合もあります。新聞、テレビなどメディアに取り上げられてきた成果を中心に、その一部を紹介します。
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1.落雷による死因解明について(中日新聞2010年5月5日 3面)


 落雷による死因については、心不全によるものが多いとされていますが、その理由について詳細に検討した報告例はありませんでした。詳細なシミュレーションを行ったところ、上半身に雷が落ちれば、多くの場合には、電流は血液を伝わり地面へ流れるため、結果的に心臓付近の電界が大きくなることがわかりました。この要因は、血液の高い導電率(電流が流れやすい)によるものです

【参考文献】
T. Nagai and A. Hirata, “Computation of induced electric field and temperature elevation in human due to lightning current,”
Applied Physics Letters, vol.96, no.183704, 2010.


2.静電気によるしびれの謎解きについて(中日新聞2011年3月11日 1面)

 冬場に静電気を経験したことは皆さんおありではないでしょうか。その現象の速さはご存知でしょうか?バチッという瞬間に静電気放電に伴い電磁波が発射され、人体表面に沿ってほぼ光速で全身を駆け巡ります。人体を駆け巡るのに要する時間は、おおよそ1億分の1秒でした。ただし、その瞬間に人体に蓄積された電荷がすべて放出されるわけではなく、その後もゆっくりとした電流が体表を流れ続けます。実験との比較より、人体組織の電流に伴う知覚(刺激)はある断面を通過する電荷量により決定されることが確認でき、知覚には千万分の1秒から百万分の1秒程度の時間で知覚することがわかりました。

【参考文献】
T. Nagai and A. Hirata, “In-situ electric fields causing electro-stimulation from conductor contact of charged human,” Radiation Protection Dosimetry, vol.140, no.4, pp.351-356, 2010

A. Hirata, T. Nagai, T. Koyama, and O. Fujiwara, “Propagation of ESD-induced ultra-wideband electromagnetic pulse in the human body,” IEEE Antennas and Wireless Propagation Letters, vol.9, 1245-1247, 2010.


3.子供の熱中症に関する一考察(中日新聞2011年8月8日 1面、産経新聞89日、日本経済新聞、朝日新聞12日、毎日新聞812日夕刊、新華社通信および人民日報Web版など)

 
本研究グループでは太陽光(いろいろなスペクトル(周波数)を含む電磁波)および高い外気温にさらされた場合の、体内温度上昇変化を追跡する技術を有しています。今回の報告では、外気温が高く、太陽光にさらされる状況をの体温変化、発汗についてシミュレーションを行いました。最悪の状況を考えた場合、外気温が45℃の場合に脱水症状とされる体内の水分損失3%に達するには、3歳児では13分、成人では1時間以上を要するという分析結果を得ました。
 なお、2011年には各種メディアに、車内における子供の熱中症について注目頂きましたが、異なる温度、湿度に加え、ヒトの姿勢、太陽光の入射角度、服の有無など、各種状況を考慮することも可能です。また、今回検討した環境において3歳児が13分以内のばく露であれば安全であることを示唆するものではありません。

【参考文献】
R. Hanatani, I. Laakso, A. Hirata, M. Kojima, and H. Sasaki, “Dominant factors affecting temperature elevation in adult and child models exposed to solar radiation in hot environment,” Progress in Electromagnetic Research B, vol.vol.34, pp.47-61, 2011.



4.高齢者の熱中症に関する一考察(中日新聞2012年7月4日夕 1面

 本研究グループでは高い外気温にさらされた場合の、体内温度上昇変化を追跡する技術を開発してきました(サウナの外気温、湿度などまで考慮可能)。環境省の熱中症環境保健マニュアルなどにも@高齢者の皮膚温度感受性の劣化、A体温調整の遅延などが指摘されています。今回の報告では、高齢者の発汗量、皮膚血流量の増加は、20-30代の若年層に比べて皮膚温度が1.5〜2.0℃程度高くなってから開始するとした場合、実測データと解析結果がよく一致することを示しました。このことは、例えば、温度35℃、湿度50%の室内に1時間いることを考えた場合、高齢者の方が皮膚温度上昇が0.8℃、体内深部温度上昇が0.3℃程度大きくなります。

【参考文献】
A. Hirata, T. Nomura, and I. Laakso, “Computational estimation of decline in sweating in the elderly from measured body temperatures and sweating for passive heat exposure,” Physiological Measurement, Aug. 2012(予定).